視聴覚検診事業
1.経過
視力・両眼視機能などの視機能は出生後に発達するものであり、その発達が8~9歳で完了するということは、一般的にはあまり知られておりません。
一方、聴覚については、比較的軽い難聴や耳や鼻の病気からくる聴力低下は見過ごされていることが多くあります。
視聴覚検診事業は、昭和45年、母子保健法第13条及び神奈川県母子衛生対策基本要綱に基づく神奈川県衛生部の委託事業としてスタートしました。就学前幼児の視覚・聴覚の疾患について早期発見、早期治療を行うため、幼児期での検査方法の確立を目指し、視覚・聴覚とも専門医および行政関係者が参加する専門委員会を設置して検討を行いました。
昭和46年度から幼稚園、保育園を母集団として本格的に事業が始まり、その後もシステムの検討を重ねて、調査票のみの選別方式から、保護者や保育者による検査等を加えるなど、精度の高い検診をつくり上げてきました(対象年齢は当初5歳、昭和59年より4歳)。
昭和49年度に横浜市、61年度に川崎市、62年度には横須賀市で4歳児視聴覚検診が始まり、神奈川県域すべての地域で視聴覚検診が実施されるようになりました(平成9年度まで、年間対象児約8万人)。
検査後の精密検査、治療については、神奈川県眼科医会、耳鼻科医会の協力を得て開拓した地域の医療機関へ紹介してきました。
また小児療育相談センター内でも昭和45年度より要精密検査児を対象とした眼科・耳鼻科の診療を開始しました(耳鼻科は平成18年度で閉鎖)。
平成6年7月、母子保健法施行規則の一部改正によって乳幼児健診が市町村に移管され、3歳児健診に視聴覚検査が組み入れられ、視聴覚検診事業として横浜市、川崎市をはじめ県内各市町村から委託を受け実施しています。
2.3歳児視聴覚検診事業(神奈川県域市町委託事業)
3歳児健診における視覚・聴覚に関して、県域の22市町(横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、逗子市、三浦市、秦野市、大和市、伊勢原市、南足柄市、葉山町、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、松田町、開成町、愛川町、湯河原町、箱根町)からの委託により17,880人のスクリーニングを行い、母子保健施策への協力、援助を行いました。
表-1 3歳児検診実施状況
| 一次スクリーニング | 二次スクリーニング | 精密検査 | |||
| 調査実施数A | 検査対象数B (検査対象率B÷A ) |
検査実施数 C (検査実施率 C÷A) |
要精検数 D (要精検率 D÷A) |
精検受診数 E (精検受診率 E÷A) |
|
| 視覚 | 17,880 | 4,129(23.1%) | 1,954(10.9%) | 479(2.7%) | 319(1.8%) |
| 聴覚 | 4,631(25.9%) | 2,228(12.5%) | 97(0.5%) | 55(0.3%) | |
※上記は平成22年3月までの実施状況。二次検査は9月まで行われ、検査実施数は4月以降の実施分が加算される。
図-1 3歳児スクリーニングの流れ

3.4歳児視聴覚検診事業(横浜市・川崎市委託事業)
横浜市・川崎市の幼稚園・保育園(施設数:横浜市821、川崎市219)に在園している4歳児を対象に視覚・聴覚のスクリーニングを行い、精密検査・治療指導へとつなぎました。
4歳児は3歳児に比較して応答が確実であり、また園の協力を得て調査票を配布・回収し、保育者による視力検査が行えることなどから、効率的で精度の高い検診となっています。
また、横浜市・川崎市以外の幼稚園・保育園に通園している園児や各家庭で保育する幼児に対しては、個別勧奨通知の送付や市の広報での告知を行うなど、実施率の向上に取り組みました。
表-2 4歳児検診実施状況 (平成22年5月31日現在)
| 一次 スクリーニング |
二次スクリーニング | 精密検査 | ||||
| 調査実施数A | 検査対象数B (検査対象率B÷A ) |
検査実施数 C (検査実施率 C÷A) |
要精検数 D (要精検率 D÷A) |
精検受診数 E (精検受診率 E÷A) |
||
| 横 浜 市 |
視覚 | 31,015 | 4,572 (14.7%) |
3,617 (11.6%) |
1,500 (4.8%) |
1,264 (4.0%) |
| 聴覚 | 3,711 (11.9%) |
2,972 (9.5%) |
110 (0.3%) |
94 (0.3%) |
||
| 川 崎 市 |
視覚 | 11,245 | 1,627 (14.4%) |
1,205 (10.7%) |
511 (4.5%) |
435 (3.8%) |
| 聴覚 | 1,316 (11.7%) |
1,008 (8.9%) |
50 (0.4%) |
37 (0.3%) |
||
図-2 4歳児スクリ―ニングの流れ

4.視聴覚検診事業による精密検査及び治療指導結果
(1)視覚検診結果
県域22市町及び横浜市・川崎市の視覚検診実施数(一次スクリーニング調査実施児数)60,140人のうち、二次スクリーニングを経て異常が疑われた要精密検査児は2,490人(4.1%)で、いずれも医療機関における精密検査受診を勧奨しました。要精密検査児のうち2,018人(81.0%)が地域の眼科医療機関による精密検査の受診につながりました。これは一次スクリーニング調査実施児数の3.4%にあたります。
精密検査後の主な診断名は、遠視性乱視、近視性乱視、屈折性弱視、不同視弱視、外斜視、内斜視などでした。
今後とも、受診勧奨後、受診に至らなかったケースについてのフォロー体制を充実し、要精密検査児が適切な治療に繋がるよう努めていきます。
(2)聴覚検診結果
県域22市町及び横浜市・川崎市の聴覚検診実施数(一次スクリーニング調査実施児数)60,140人のうち二次スクリーニングを経て異常が疑われた要精密検査児は257人(0.4%)で、いずれも医療機関における精密検査受診を勧奨しました。本検診(二次スクリーニング)で採用している「幼児用語音聴力検査」は難聴幼児の早期発見を目的に小児療育相談センターが開発した独自の手法で、幼児の理解力に応じて親しみやすい簡単な単語を用います(40dBで検査語を聞き取り、復唱または絵による指差し)。この検査手法は、通常の「純音聴力検査」と比較し、幼児の選別聴力検査として効果を上げています。
要精密検査児のうち186人(72.4%)が地域の耳鼻咽喉科医療機関による精密検査の受診につながりました。これは一次スクリーニング調査実施児数の0.3%にあたります。
精密検査後の主な病名は、滲出性中耳炎、鼻炎・副鼻腔炎、耳垢栓塞、伝音難聴、感音難聴、アデノイド増殖症などです。
今後とも、“ことばの遅れ・発達の遅れ”等にもつながる難聴幼児の早期発見の重要性を保護者はもとより各自治体保健行政関係者はじめ、幼稚園・保育園の関係者にさらに理解いただくよう、引き続き聴覚検診事業の普及活動に取り組んでいきます。
※この冊子は検診事業において視覚・聴覚の早期発見、早期治療の大切さをわかりやすく解説したもので、保護者の方にお配りしています。



