小児療育相談センター
1.はじめに
近年の発達障害者支援法、特別支援教育推進のための学校教育法等の一部改正など、発達障害児・者を含む障害者支援施策等が進みつつあります。
こうした状況の中、小児療育相談センターは「発達障害等の医療・相談を中心とした専門的支援機関」として、その役割機能の充実が求められています。
診療相談部では、児童精神科、神経小児科等の医師による医学的診断ならびに心理士等の検査・治療を行うとともに、福祉相談室での相談支援や関係機関調整等を行っています。
平成21年度の利用者教は2,023人で、知的障害を伴わない発達障害児・者が増加傾向にあり、約4割となっています。年代別では成人利用者が約3割を占め、そのほとんどが幼児期、学齢期からの継続相談者です。
このように当センターは発達障害児・者の幼児期、学齢期、青年期以降のライフステージを通して、発達評価・診断とともに、家族関係、学校生活、仕事、地域での暮らし等に焦点をあてた医療と福祉の総合的な観点からの診療相談活動を行っています。
2.診療相談の概況
(1)診療相談件数
平成21年度の診療相談実人数と延べ人数は以下のとおりです。
| 実人数 | 延べ人数 | |
|---|---|---|
| 診療相談件数 | 2,050人(2,023人) | 10,013人(10,091人) |
( )内は前年度
診療相談件数とは、ソーシャルワーカーによる受理面接を経て、診療室の医師の診療(初診)を受けた新規利用者と前年度以前からの継続利用者の合計です(福祉相談室の相談のみや巡回相談のみのケースは含まない)。
図-1 実人数の推移

(2)地域別内訳
診療相談ケース2,050人の居住地域別内訳は、横浜市が1,190人(58.0%)と最も多く、次いで県域市町村438人(21.4%)、川崎市301人(14.7%)等となっています。
図-2 地域別内訳

(3)年齢層別内訳
診療相談ケースを年齢層別にみると、最多年齢層は学齢期(小・中・高校生等)が1,258人(61.4%)と多く、特に中学生が484人(23.6%)で、この5年間で181人増加し、高校生等も306人(14.9%)と156人増加しています(表-1)。
地域別にみると、横浜市域では方面別に地域療育センターが整備されていることから、乳幼児の来所は激減する一方、中学生・高校生等が増加しています。この背景には発達障害者支援法の整備や学校教育におけるLD等、発達障害のある児童生徒に対する気づきや支援の取り組みが進みつつあることがあります。また当センターが横浜市の「学齢障害児支援事業(学齢後期)」の受託機関として地域療育センターとの機能分担を図っていること、さらには20年度から「学校連携支援モデル事業」を開始したこと等が、学校、教育相談機関、児童相談所、区福祉保健センター等に周知されてきたことによるものと考えられます。
川崎市と県域市町村では、療育相談窓口を通して紹介された幼児や小学生等が診断と専門的な助言を求めて来所するケースが多いことや、その後も医療・専門相談の継続を希望するケースも多いことから、県域の各地域の療育資源に対して当センターが専門的機関としての役割を担っている状況となっています。
表-1 地域別・年齢層別内訳
| 年齢層区分 | 横浜市(%) | 川崎市(%) | 横須賀市(%) | 県域(%) | 県外(%) | 合計(%) | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 就学前 | 乳児 | 0(0) | 4(1.3) | 0(0) | 7(1.6) | 1(1.2) | 12(0.6) |
| 幼児 | 5(0.4) | 28(9.3) | 0(0) | 84(19.2) | 4(4.8) | 121(5.9) | |
| 学齢期 | 小学生 |
155(13.0) | 102(33.9) | 8(21.1) | 162(37.0) | 41(49.4) | 468(22.8) |
| 中学生 | 348(29.2) | 54(17.9) | 5(13.2) | 61(13.9) | 16(19.3) | 484(23.6) | |
| 高校生 | 227(19.1) | 33(11.0) | 10(26.3) | 32(7.3) | 4(4.8) | 306(14.9) | |
| 青年期 以降 |
18~19歳 | 87(7.3) | 14(4.7) | 3(7.9) | 18(4.1) | 2(2.4) | 124(6.0) |
| 20歳以上 | 368(30.9) | 66(21.9) | 12(31.6) | 74(16.9) | 15(18.1) | 535(26.1) | |
| 合計 | 1,190(100) | 301(100) | 38(100) | 438(100) | 83(100) | 2,050(100) | |
(4)継続および経過観察の状況
継続ないし経過観察の内容としては、週1回~2週間に1回(訓練や投薬治療等)、月1回(投薬治療など)、2~4か月に1回、6か月~1年に1回(発達や行動面の把握と相談等)です。20年以上の継続患者は327人(15.9%)で、一般就労や地域作業所、グループホーム、入所施設等状況は様々ですが、てんかん等の継続治療、行動や生活における相談、年金診断や意見書、福祉制度の相談等個々のライフステージに沿って伴走的な診療相談を行っています。
(5)新規利用者
新規利用者は313人(利用実人数の16.5%)で、地域別では横浜市が183人(58.5%)で全体の6割を占めています。
年齢層別では学齢後期以降が増加しており、幼児・学齢前期が減少傾向にあります(過去5年間で中学生が約2.3倍に増加)。
来所経路の内訳は、地域療育センター71人(22.7%)、公的機関65人(20.8%)と続いています。また学校・スクールカウンセラーや教育相談機関等の教育関係者等からの紹介が84人(26.9%)となっています(表ー2)。
学校での特別支援教育の取り組みの中で教員による児童生徒の発達障害等への気づき、理解の高まりや校内支援体制の整備等に伴い、スクールカウンセラーとの相談や保護者との面談等が来所の契機になっているケースが増えつつあります。
図-3 新規ケースの年齢層別内訳

| 年齢層 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | 平成20年度 | 平成21年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 乳児 0~ 2歳 | 5 | 3 | 16 | 11 | 12 |
| 幼児 3~ 5歳 | 92 | 87 | 90 | 72 | 58 |
| 小学生6~11歳 | 130 | 118 | 138 | 124 | 90 |
| 中学生12~14歳 | 51 | 59 | 86 | 94 | 115 |
| 高校生15~17歳 | 12 | 16 | 18 | 22 | 15 |
| 18~19歳 | 10 | 8 | 13 | 3 | 13 |
| 20歳以上 | 9 | 13 | 14 | 7 | 10 |
| 合計 | 309 | 304 | 375 | 333 | 313 |
表-2 新規ケースの来所経路
| 来所経路 | 人数 | (%) | 来所経路 | 人数 | (%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療機関・医師 | 9 | (2.9) | 学校・スクールカウンセラー | 54 | (17.3) |
| 公的機関 (福祉保健センター、 療育相談室等) |
65 | (20.8) | 教育相談機関 (特別支援教育総合センター、 教育相談センター等) |
30 | (9.6) |
| 児童相談所 | 13 | (4.2) | 幼稚園・保育所 | 2 | (0.6) |
| 地域療育センター | 71 | (22.7) | センター利用者・知人等の情報 | 25 | (8.0) |
| 発達障害者支援センター | 11 | (3.5) | 家族・本人が元利用者 | 17 | (5.4) |
| 障害児施設 | 3 | (1.0) | 広報・インターネット・書籍等 | 9 | (2.9) |
| 障害者施設等 | 2 | (0.6) | その他 | 2 | (0.6) |
| 合計 | 313 | (100) | |||
(6)診療相談体制
診療相談は以下の職員体制で行っています。
| 室 | 職員 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 福祉相談室 | 精神保健福祉士 1 社会福祉士 2 |
受理面接、地域生活相談、福祉制度の相談、 地域巡回相談(保育園・幼稚園・学校・親の会・地域作業所等) |
| 診療室 | 医師2、5(非) 看護師3、1(非) 臨床検査技師3(非) |
児童精神科、神経小児科、小児科医師による 医学的診断と治療および相談指導 薬物療法、精神療法等 |
| 心理相談室 [心理1] [心理2] |
臨床心理士2、2(非) | 発達評価、療育相談、心理療法、巡回相談 [心理1]:発達評価、療育相談、勉強会 [心理2]:神経症等の心理査定と心理療法 |
| 発達障害等支援対策室 | 精神保健福祉士 1 臨床心理士 1 |
学齢障害児支援、地域連携支援等 |
3.各室活動報告
(1)福祉相談室
① 福祉相談
福祉相談室では、所内相談、電話相談を中心としつつ横浜市学齢障害児支援事業における学校訪問をはじめ、神奈川県域市町の幼稚園・保育園等への巡回相談や福祉施設や障害者団体への訪問支援等、多様な相談業務を行っています。
利用者の年齢によって、「幼児期には発達相談や医療相談」を、「学齢期には行動面の相談や家族支援、関係機関調整」を、「成人期には本人支援や施設職員との連携や高齢化した保護者への福祉制度利用支援」をと、相談業務の焦点が変化してきます。
一方、来所や診療に至らない内容の問い合わせや相談に対しても、療育相談、福祉制度案内、関係機関の紹介、調整等を行っています。
継続相談者には、主として保護者に対して随時電話や面接を通じて、発達や行動面の支援、家族支援、家族関係調整、制度や資源の利用案内、関係機関調整・連携等を行っています。
② 受理面接(インテーク)
診療希望者の電話申込みの際に当センターヘの紹介経過や相談の趣旨を伺ったうえで、改めて相談内容と診療目的を確認するため受理面接をしています。
基本的にはソーシャルワーカーが保護者との直接面接で、コミュニティ・ケアと家族支援の原則に沿って対応します。
家族が直面する問題も複雑化・困難化しているので、訴える事柄に焦点を当てるだけでなく、その背後にある問題や来談に至るまで本人・家族が努力してきた経過にも焦点を当てて相談目的を整理・確認し、初診の予約となります。
(2)診療室
① 来所児者数と診断内訳
平成21年度に診療室を受診した来所児者の診断・障害内訳は表-3のとおりです。複数の診断がある例は主たる診断名を、また新規ケースは初診時の診断名です(診断名は経過の中で変更することもあります)。
全ケースをみると、広汎性発達障害65.4%、てんかん12.5%、精神遅滞11.4%、学習障害・ADHD5.3%等の疾患が9割近くを占めています(特定不能の広汎性発達障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害等の知的障害を伴わない発達障害が約3割を占める)。これらは障害の性質上、受け入れ可能な機関が少なく、そのために成人に至っても継続して診察する必要があります。
また主診断が不登校、神経症、適応障害等の神経症・行動障害の人が91人(4.4%)いますが、その背景に発達障害があると考えられる人も少なくありません。
表-3 診断・障害内訳
| 診断・障害名 | 全ケース | うち新規ケース | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 人数 | 小計 | % | 人数 | 小計 | % | ||
| てんかん | てんかん | 32 | 257 | 12.5 | 2 | 4 | 1.3 |
| てんかん+精神遅滞 | 115 | 1 | |||||
| てんかん+広汎性発達障害+精神遅滞 | 103 | 1 | |||||
| てんかん+広汎性発達障害(高機能) | 7 | 0 | |||||
| 精神遅滞 | 精神遅滞 | 217 | 233 | 11.4 | 23 | 23 | 7.3 |
| ダウン症 | 16 | 0 | |||||
| 広汎性 発達障害 |
自閉症+精神遅滞 | 648 | 1,340 | 65.4 | 62 | 221 | 70.6 |
| 特定不能の広汎性発達障害+精神遅滞 | 122 | 14 | |||||
| 高機能自閉症 | 143 | 23 | |||||
| アスペルガー症候群 | 250 | 66 | |||||
| 特定不能の広汎性発達障害(高機能) | 177 | 56 | |||||
| 学習障害・ ADHD |
学習障害 | 9 | 109 | 5.3 | 3 | 25 | 8.0 |
| 学習障害+ADHD | 24 | 6 | |||||
| 注意欠陥/多動性障害 | 76 | 16 | |||||
| 特定不能のコミュニケーション障害 | 1 | 1 | 0.0 | 0 | 0 | 0 | |
| 運動能力 障害 |
運動発達障害 | 1 | 4 | 0.2 | 0 | 1 | 0.3 |
| 発達性協調運動障害 | 3 | 1 | |||||
| 神経症・ 行動障害 |
強迫神経症 | 2 | 91 | 4.4 | 1 | 33 | 10.5 |
| 不登校(登園拒否) | 23 | 10 | |||||
| チック障害 | 1 | 0 | |||||
| 選択性緘黙 | 6 | 2 | |||||
| 家族関係不適応 | 8 | 4 | |||||
| 集団不適応 | 2 | 0 | |||||
| 行為障害 | 2 | 1 | |||||
| 反抗挑戦性障害 | 5 | 3 | |||||
| 適応障害 | 9 | 3 | |||||
| 神経症 | 33 | 9 | |||||
| 統合失調症 | 2 | 2 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | |
| 気分障害(そう鬱) | 2 | 2 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | |
| その他 | 11 | 11 | 0.5 | 6 | 6 | 1.9 | |
| 合計 | 2,050 | 100 | 313 (15.3%) |
100 | |||
② 臨床検査業務と薬剤の処方
主な臨床検査としては、脳波検査が多く行われます。また、長期にわたり抗てんかん薬や精神神経用薬が投与されているために、定期的な脳波検査、血液検査、生化学的検査、薬物血中濃度測定、一般尿検査が行われます。
一般の医療機関では対応が難しい障害児・者の採血や検査等についても、時間と工夫を重ねて検査を実施し、より適切な薬の処方に努める等、継続的医療管理を行っています。
③ 文書の作成
対象患者の障害の性質上、自立支援医療診断書(精神通院医療)、生活保護法による医療要否意見書をはじめ、障害年金・特別児童扶養手当などの診断書、紹介者宛の診察結果報告等が多くあります。
また、近年は障害者自立支援法に伴う障害区分認定意見書と療育手帳取得のための診断書の作成が多い状況です。
また、保護者の依頼や了承のもとに、学校や教育委員会などの教育機関、保育所・通園施設などの福祉施設との連携のために相互に文書の交換を行っています。
④ 関係機関との連携
利用者や家族の依頼のもとに、関係機関(学校、児童相談所、福祉施設等)、情報交換やケース会議を行うなど関係機関との連携、対応が増加しています。
(3)心理相談室
心理相談室は「心理1」、「心理2」の2つで構成されています。「心理1」では発達障害のある子どもと親に対して主に心理評価と個別課題を通した療育相談を行い、「心理2」では主に心理的・情緒的な問題を持った子どもと親に対して遊戯療法やカウンセリングを行っています。
「心理1」相談室
① 相談利用者の概要
平成21年度に来室したケースの実人数は305人で、そのうち新規ケースは117人でした。診断・障害別内訳は表-4、年齢別内訳は表-5のとおりです。
表-4 診断・障害別内訳
| 障害別内訳 | 全ケース(%) | うち新規ケース(%) |
|---|---|---|
| アスペルガー障害・高機能自閉症 | 149(48.9%) | 54(46.1%) |
| 注意欠陥/多動性障害 | 10(3.3%) | 8(6.8%) |
| 学習障害 | 5(1.6%) | 3(2.6%) |
| 自閉症+精神遅滞 | 96(31.5%) | 29(24.8%) |
| 精神遅滞 | 23(7.5%) | 8(6.8%) |
| ダウン症 | 3(1.0%) | 1(0.9%) |
| その他 | 19(6.2%) | 14(12.0%) |
| 合計 | 305(100 %) | 117(100 %) |
表-5 年齢層別内訳
| 年齢 | 全ケース(%) | うち新規ケース(%) |
|---|---|---|
| 乳幼児 ~5歳 | 6(2.0%) | 2(1.7%) |
| 小学生 6~11歳 | 106(34.8%) | 46(39.3%) |
| 中学生 12~14歳 | 112(36.7%) | 48(41.1%) |
| 高校生等15~17歳 | 58(19.0%) | 10(8.5%) |
| 18歳以上 | 23(7.5%) | 11(9.4%) |
| 合計 | 305(100%) | 117(100%) |
過去5年間の新規ケースの診断・障害別内訳人数の推移からも、アスペルガー障害、高機能自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害(LD)等の知的な遅れを伴わない発達障害児の割合が年々多くなっています(図-4)。
また初診時の年齢層では就学前の子どもは激減し、学齢期(小学生、中・高校生等)の割合が増加しています。
図-4 5年間の新規ケースの診断・障害別内訳の変化
② 療育相談
個別の療育相談は、各家族のニーズに応じて、1か月~1年に1回定期的に、あるいは随時必要に応じて個別の評価と相談を行います。保護者が子どもの障害特性や能力を理解して主体的に取り組み、本人と家族が安定して生活することをめざしています。
子どもの評価は、フォーマルな知能検査(WISC−Ⅲ、田中ビネー知能検査V)、インフォーマルな評価(認知面、コミュニケーション、行動特徴、遊びなど)を随時行っています。
小学校低学年の場合、保護者が認知能力の向上を希望する傾向が見られますが、当室では認知能力の向上を目ざすというよりも、「子どもの興味や能力特性を活かす」「子どもが学習するペースや得意・不得意を知る」「意欲的に取り組む課題や活動を見つける」等を主な目標としています。
保護者との相談内容は、子どもの障害特性や行動の特徴、発達のペースを把握したり、強みや興味を探り、それをどのように生活に取り入れていくかなど、関わり方について考えたりすることが中心となります。必要に応じて社会資源の活用や、将来の具体的な見通しについても話し合っています。
③ 家族のための勉強会
療育相談を行っているケースの家族を対象として、「家族のための勉強会」を実施しています。「周囲の人に子どもを理解してもらうために」「地域での生活を豊かにするために」「家庭での工夫」等のテーマを決め、個別相談ではできない情報提供の場となっています。
④ 関係機関との連携
心理相談室利用児が日々通っている学校等(小・中学校の通常学級・特別支援学級、特別支援学校)との連携の機会は年々増加しています。
個別の評価場面や検査で把握できる子どもの特性や能力、関わり方について、保護者や学校から文書での情報提供を求められる機会も増加しています。保護者と担任教諭との面談の際に保護者宛ての文書を資料として活用したり、学校・担任・スクールカウンセラー宛てに送付する等、機関連携を図っています。
また教員等学校関係者が直接来所したり、横浜市の学齢障害児支援事業(学齢後期)等では福祉相談室のソーシャルワーカー等と学校訪問を行っています。

「心理2」相談室
① 相談利用者の概要
平成21年度の相談利用者数は88人(うち新規ケースは37人)です。相談形態は本人の状態や経過によって異なりますが、ほとんどの場合を「本人と保護者の並行相談」で行っています。
② カウンセリング・心理検査
カウンセリングは、本人の状態(病態の重さや問題の切迫度)を面接や心理検査によってアセスメントし、本人や保護者と方針について話し合った上で、定期的(毎週・隔週・月ごと等)に行うことを基本としています。
本人に対しては、主体的に自分の問題に取り組めるように援助していくことを大きな目標として、子どもの場合は遊びを媒介にした遊戯療法を、思春期以降は大人と同様に言語的なやり取りを中心としたカウンセリングを行っています。
保護者に対しては、まず保護者の日頃の取り組みを労った上で、本人に対する理解を共有し、必要に応じて具体的な関わり方について助言しています。
心理面接においては、個別の信頼関係がとても重要になりますので、心理士は常にその点に注意しながら、本人と保護者それぞれと向き合い、主体性を尊重した面接関係を心がけています。
心理検査は、利用者のアセスメントのために実施しています。
③ 関係機関との連携
相談利用者の依頼に基づいて、関係機関(幼稚園、学校、児童相談所等)と情報交換等の連携を行っています。
4.神奈川県在宅心身障害児巡回等相談事業(県委託事業)
(1)発達障害児医療相談チーム派遣事業(在宅心身障害児巡回等相談事業)
平成21年度より、専門医師及び心理士、ソーシャルワーカー等の「発達障害児医療相談チーム」を構成して、県内の2地域(三浦市、逗子市)を対象に巡回派遣を行っています。幼稚園や保育園等で気になる子や発達障害等を疑われる子どもの医療・療育相談を各6回実施し、発達障害児の療育支援を行いました。また、両市の障害福祉、子育て支援所管課と連携して「発達が気になる子の理解と支援」の研修会を実施しました。
① 三浦市「こども発達医療相談」(年6回)
対象:3歳~小学生
会場:三浦合同庁舎など
実施内容:・6人(延べ10人)に医療、療育相談を実施
・関係機関(保育園、教育委員会、通園等)との情報交換
② 逗子市「ちょっと気になる5歳児発達相談」(年6回)
対象:5歳児(幼稚園・保育園の年長児)
会場:逗子市保健センター、逗子市市民交流センターなど
実施内容:・8人(延べ9人)に医療・療育相談を実施
・幼稚園、保育園等の職員を対象に「発達が気になる子の理解と支援」の
研修会を3回実施。
・関係機関(幼稚園、通園等)と情報交換
(2)在宅心身障害児療育検診事業
本事業では、県域(横浜市、川崎市、横須賀市を除く)の、原則として児童相談所長の依頼による対象児に対し、所要の検査を実施して、障害に関する適正な判断・診断と処遇の方針を明確にし、必要に応じて、療育相談を行います。児童相談所をはじめ、各市町の療育相談窓口や教育相談機関、小学校からの紹介が多くなっています。平成21年度は新規に療育検診に訪れた68人のうち45人(66%)が、市町の療育相談窓口からで、乳幼児検診や保育所、幼稚園で発達障害を疑われた児童でした。また診断結果は、広汎性発達障害が60人(88.2%)で、他は学習障害2人、精神遅滞2人、てんかん1人等でした。
① 診療相談(療育検診)の状況
継続ケースも含めた療育検診ケースは364人ですが、このうち乳幼児が91人(25%)、小学生が162人(44%)と約7割を占めています。このことは、県域における早期からの療育相談体制が十分ではない状況が反映されていると考えられます。新規児の半数以上が乳幼児ですが、その後も小学校期や中学校期まで相談を継続することが多いので、年齢層内訳は図-5のようになっています。
図-5 療育検診ケースの年齢層内訳

② 療育相談の実績
ソーシャルワーカーや臨床心理士が、まだ医療機関や療育検診を未受診の発達障害を疑われる児童について、観察やアセスメントを行い、保護者や幼稚園・保育園、学校の教員等に、早期発見、療育指導に関して専門的なアドバイスを行いました。
表-6 療育相談の内訳
| 主な対象 | 実施件数 | 支援対象者数 | 対象児数 |
|---|---|---|---|
| 保育園・幼稚園 | 19 | 120 | 127 |
| 学校、教育機関 | 8 | 89 | 8 |
| 療育機関 | 8 | 69 | 28 |
| 児童相談所 | 3 | 4 | 3 |
| 親の会等 | 13 | 180 | 96 |
| 医療機関 | 3 | 8 | 3 |
| 福祉施設 | 3 | 3 | 3 |
| 合計 | 57 | 473 | 268 |
5.横浜市学齢障害児支援事業[学齢後期](横浜市委託事業)
平成13年度より横浜市福祉局(現所管:こども青少年局)が開始した「学齢障害児支援事業」において学齢後期(中学校期以降:12歳~19歳)については小児療育相談センターが受託機関として、「診療、相談、心理治療」を中心にしつつ、勉強会、デイケア等を行っています。
この事業では、障害児の思春期(中学校期以降)に入り生ずる自傷、ひきこもり等の問題行動が多岐にわたる中で、障害児及びその家族に対して“医学的診断”を踏まえて、学校生活や社会生活上の問題解決に向けて学校や教育相談機関、地域療育センター等関係機関と連携して個別相談・支援を行っています。
また、平成20年度より、発達障害等生徒の学校生活における困難さに対して教育委員会、学校と連携して本人支援を行うため、新たに「学校連携支援モデル事業」を開始。平成21年度は当センター診療室等を利用している中学生で広汎性発達障害等により、学校生活の不適応が著しい相談ケースで学校と保護者が支援を希望(承諾)した「市立中学校16校23人」についてソーシャルワーカー、心理士等が学校訪問し、校長、特別支援教育コーディネーター、担任等と協力して相談支援を行いました。
(1)来所児の概要
来所児は市内全域から来所しており、この5年間で373人から662人と約8割増加しました。また新規相談の大半は中高校生になって初めて診療に訪れるケースです。
図-6 学齢障害児後期の5年間の推移(実人数)

主訴別の内訳では、専門診療・相談希望56人や行動上の問題15人を含めて約7割が「学習困難」「対人関係トラブル」「学校での不適応」「不眠」「不登校」「引きこもり」「家庭内暴力」「非行」等の生活面・行動面の問題を抱えたケースでした。
診断・障害内訳では自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー障害、ADHD等の発達障害が約7割、神経症や不登校が2割、精神遅滞が1割で、本人に何らかの素因があって学習障害や対人関係の困難さをきたし、主訴のような不適応行動等が引き起こされています。さらにこのことから家庭内暴力、親子関係、兄弟関係等の問題が深刻になって、家族関係調整の支援が必要なケースも少なくありません。
表-7 診断・障害内訳(平成21年度)
| 診断・障害 | 人数 | 診断・障害 | 人数 |
|---|---|---|---|
| 高機能自閉症 | 53 | 自閉症+精神遅滞 | 203 |
| 広汎性発達障害 | 79 | 広汎性発達障害+精神遅滞 | 41 |
| アスペルガー障害 | 93 | 精神遅滞 | 67 |
| 注意欠陥多動障害 | 24 | ダウン症 | 7 |
| 学習障害 | 9 | てんかん | 13 |
| 反抗挑戦性障害 | 4 | てんかん+広汎性発達障害 +精神遅滞 |
7 |
| 神経症等 | 14 | ||
| 不登校 | 18 | てんかん+精神遅滞 | 16 |
| 適応障害等 | 10 | その他 | 4 |
| 合計 | 662 | ||
表-8 新規申込み者の紹介経路(平成21年度)
| 紹介経路 | 件数 | 紹介経路 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 学校(含スクールカウンセラー) | 42 | 医療機関 | 3 |
| 教育相談機関 | 15 | 横浜市発達障害者支援センター | 5 |
| 地域療育センター | 24 | 民間福祉施設 | 1 |
| 総合リハビリテーションセンター | 3 | 知人・センター利用者・親の会等 | 16 |
| 児童相談所 | 11 | 兄弟・本人が元利用者 | 13 |
| 区福祉保健センター | 10 | 自分で調べて | 6 |
| その他公的機関 | 2 | 合計 | 151 |
(2)支援の内容
学齢後期のケースでは、相談経過の有無にかかわらず、本人の障害特性に伴う症状の複雑化、二次的障害の顕在化、学校における対人関係トラブル、不適応、家族関係調整、地域の過ごす場、進路選択、そして何よりも本人への障害告知の問題等が複雑に絡み合っています。
特に発達障害児等に関しては、小学校高学年になり適応障害等の症状が顕れることが多く、親や教師等、周囲の大人たちが気づかないまま、適切とはいえない対応を重ねているケースが多くあります。学齢後期になり初めての療育相談機関として当センターを利用する生徒等の多くは、こういう方たちです。
初回の来所時には保護者がその対応に自信喪失し、親子関係に葛藤が生じていることも多いことから、今までの家族のとりくみを一緒に振り返り、当センターを利用する目的を確認する作業を行います。
また、本人に困り感があっても年齢的に専門機関の診療相談への抵抗がある場合も少なくなく、本人来所に向けた親子関係調整等の支援を行います。
診察では、本人に来所目的を確認し、相談のモチベーション保持の働きかけをします。必要に応じて心理評価を行い、発達の特性を把握した上で、保護者にその特性を説明しながら診断を伝え、対応に関する助言を行います。本人に対しては「得意」「不得意」を明らかにし、困った時の対処方法などの助言をします。
来所児の通う学校の理解を得るため、基本的には保護者自身が環境調整できるよう側面支援をするスタンスをとり、保護者の周囲の資源等を活用する力を引き出す取り組みをしています。また、保護者や学校の要請に応じて、学校や関係機関と連携をとり、学校訪問や合同カンファレンスなどを通じて支援を行っています。
表-9 医師の診療
| 19年度 | 20年度 | 21年度 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 実人数 | 延人数 | 実人数 | 延人数 | 実人数 | 延人数 |
| 12~14歳 | 313 | 1,201(53.4%) | 317 | 1,438(52.1%) | 348 | 1,604(47.1%) |
| 15~17歳 | 151 | 726(32.3%) | 199 | 1,005(36.4%) | 227 | 1,315(38.6%) |
| 18~19歳 | 71 | 320(14.2%) | 74 | 316(11.5%) | 87 | 489(14.3%) |
| 合計 | 535 | 2,247(100%) | 590 | 2,759(100%) | 662 | 3,408(100%) |
医師の診療相談は、延べ人数3,408人で、前年度に比べて649人、25.3%増加しました。また薬物治療のために定期的な診療を受けるケースが前年度の143人(24.2%)から232人(35.0%)と増えています。
表-10 関係機関との連携カンファレンス
| 関係機関 | 件数 | 関係機関職員数 |
|---|---|---|
| 中学校 | 69 | 244 |
| 特別支援学校 | 14 | 32 |
| 専修学校・サポート校 | 2 | 5 |
| 教育委員会 | 5 | 43 |
| 児童相談所 | 7 | 10 |
| 医療機関 | 3 | 5 |
| 地域活動施設 | 11 | 19 |
| その他 | 5 | 5 |
| 合計 | 116 | 363 |

